「黒部隆名誉教授 岩石・鉱物標本コレクション」デジタルアーカイブ及び企画展示公開

 この度、本学農学部生物生産学科土壌学研究室の所有する「黒部隆名誉教授 岩石・鉱物標本コレクション」をデジタルアーカイブに加え、3月21日(木)より当館ウェブサイトにて公開します。
 また、本デジタルアーカイブの公開に合わせ、3月21日〜6月27日まで、本学府中キャンパス農学部本館2階 農学部展示室(科学博物館分館)にて、本コレクションの実物資料を一部展示・公開します。

デジタルアーカイブ「黒部隆名誉教授 岩石・鉱物標本コレクション」(3月21日公開)
 本コレクションは、明治から平成にかけて教育用に収集されたもので、672個の岩石標本と近年追加された211個の岩石標本から構成されています。これらは本学農学部の前身である東京帝国大学農科大学実科時代から、学生教育に活用されてきました。本コレクションの一部となる東京帝国大学教授の脇水鐵五郎が明治から大正期に集めた標本群(脇水コレクション)は、地質学や歴史学の視点からも重要な標本となっています。
 本コレクションは、地質・土壌学教材としての役目を終え、土壌学研究室に保管されていましたが、本学の博物館学芸員養成課程を履修した学生によって「標本の写真撮影」や「メタデータの整備」(2017年度から2018年度)が行われ、2023年度の履修学生によりメタデータの確認および、本コレクションの一部を展示した「岩石標本展」が企画・開催(2023年8月26日~9月30日)されました。

2024.3.21(木)~6.27(木)ミニ企画展「黒部隆名誉教授 岩石・鉱物標本コレクション」【博物館分館(府中キャンパス農学部本館)】
黒部隆名誉教授 岩石・鉱物標本コレクションに含まれる貴重標本「赤坂石灰岩標本群」の一部や「兄島の無人岩」を含む実物資料約20点を展示いたします。
・展示場所  東京農工大学 農学部展示室(科学博物館分館)
 府中キャンパス農学部本館2階(東京都府中市幸町3-5-8)※小金井キャンパスではありません。ご来館の際はご注意ください。
・展示期間  2024年3月21日(木)〜2024年6月27日(木) 10:00〜16:00
・休館日   土曜・日曜・祝日 
※休館日は変更の可能性があります。本学科学博物館ホームページにてご確認ください。
・入場料   無料

展示・公開予定の貴重資料例

「赤坂石灰岩標本群」
「赤坂石灰岩」は、岐阜県大垣市金生山に分布する古生代ペルム紀中期から後期(約2億7000万年〜2億5000万年前)に堆積した岩石です。この岩体からは非常に多くの化石を産出し、国内で最も古くから古生物学的研究が行われてきた場所のひとつになります。豊富に産出する石灰は、江戸時代から採掘が続けられ、その地形は近年も変化し続けています。
 本コレクションには脇水鐵五郎が1900年台初頭に採集した「赤坂石灰岩」の標本が多数含まれています。これらの標本の一部は、現在は採掘などによって失われた鉱山内の山頂や山腹に見られた岩石を今に伝える貴重なもので、脇水が執筆した論文(脇水、1902)の証拠標本ともなっています。

小笠原諸島「兄島の無人岩」の展示
東京都小笠原諸島の北部に位置する兄島は、本格的に人が入植したことのない無人島で、現在でも小笠原諸島特有の乾性低木林が広がっています。兄島やその南に位置する父島には、小笠原諸島が火山活動により形成された際にできた「無人岩(Boninite)」と呼ばれる特殊な火山岩が見られ、プレートテクトニクスによりマグマが生成される過程を知るための重要な手がかりとして注目されてきました。現在、兄島全域が特別保護地区に指定され、動植物や土石の採集が禁止されているため、サンプル収集には特別な許可が必要です。
 全国各地の博物館で目にすることができる「無人岩」は、主に父島産のものですが、本コレクションは「兄島」の無人岩標本が含まれます。前述のように現在は採集に厳しい規制があり、あまり目にする機会のない貴重なものとなります。父島産のものと鉱物組織や化学組成はほぼ一致しており、父島と兄島は同時期の火山活動でその岩盤が形成されたことがわかります。

東京農工大学プレスリリース(2024年3月15日付)